ココロの好きが溢れたら
「それを姉貴に相談したら、頬に強烈なビンタされたんだ。『だから男はバカなのよ!!』ってさ」
はははっと、どこか懐かしむ顔で先輩が笑う。
先輩はそのあと、お姉さんに言われた事を俺に教えてくれた。
女が何も言わず振られた男の側にいるのは、本当に一緒にいたいと思う強い気持ちを持った好きな相手だから。
告白をされたことを自慢したり、告白してきた相手を馬鹿にする奴らもいるけれど、そいつらは本当に好きな相手に告白したことがないからそんなことが言える。
と、お姉さんはすごい形相で先輩に怒ったらしい。
「そして姉貴は俺に言った。『一度自分が振った相手に断られるのが怖い?傷つくのが怖い?ふざけんじゃないわよ』って。
その子は、いつ俺にもう側に寄るなと言われ拒絶されるか毎日不安になりながらもそばにいるんだ。アンタのそんなちっちゃい不安や負う傷なんか、その子に比べたらかすり傷にもならないってよ」
「姉貴の言う通りだよな」って、先輩は苦笑いした。
その後、お姉さんの言葉を聞いて決意した先輩は、舞子さんに告白したらしい。
その告白を聞いた舞子さんは涙を流して頷いてくれたんだとか。
「舞子の涙を見たのはその時が初めてだった。告白を断った時も舞子は笑ってた。「うん、分かってる」って言って。その後、友達として俺のそばにいる時もずっと笑ってた。
だから驚いたのと同時に、舞子がこれほど苦しんでたんだって知って申し訳なくなった。俺がちっちゃい不安と悩んでないで、もっと早く気持ちを伝えてやってたらって後悔した」
先輩の話を聞きながら、俺はやっと気付く。
……そうか。
先輩がこの話をしてくれたのは、今の俺の状況と昔の先輩がそっくりだったからなんだな。
本当に先輩はよく人を見ている。