ココロの好きが溢れたら
「たぶん陽毬ちゃん、その噂聞いちゃったんじゃないかと思って」
え……。
「ほら、借り物競争でさ。晴翔と沙織、2人でゴールしたろ?で、お題が【ずっと一緒にいたい人】。噂を知ってる1年は盛りがって話すわけじゃん」
「っ…!」
「案の定、めっちゃ盛り上がってたわけで。もし、陽毬ちゃんがどこかでその噂を聞いてたとしたら、大丈夫だったかな?って思って」
ガンッと頭を殴られたみたいだった。
もし陽毬がその噂を知っていて、あの借り物競争を見ていたんだとしたら。
『あー…俺も同じです』
何も知らずに答えた、あの時の俺の言葉を聞いたのだとしたら。
「っ……!!」
俺は、馬鹿だ。
「俊太、悪ぃ。あと頼む」
「おー。行ってらっしゃい」
教室に置いたままの荷物とか、その後の連帯責任とかはもうどうでもいい。
「陽毬っ、」
早く、あいつの所に行かないと。
それだけしか頭になかった。