ココロの好きが溢れたら


家までの道をひたすら走る。


頭に浮かんでくるのは、陽毬の泣き顔。
俺を待ってると言った時の、無理やり作った下手くそな笑顔。


どうしてあの時、引き留めなかった。

陽毬が泣いたのは分かってたじゃねぇか。

初めて会った時以来、涙を見せなかった陽毬が泣いていた理由を、俺は引き留めてでも聞かなきゃいけなかった。


『陽毬ちゃん大丈夫か?』

『陽毬ちゃんの心が折れてしまう前に、必ずよ』


なんで。

なんで俺は気づかねぇんだ。


周りに言われて初めて、陽毬が傷ついていることを知る。


だせぇ。

情けない。


どうしようもない、大バカ野郎だ。


それでも、お前に伝えたいことがある。


陽毬。


俺は、お前のことが……。



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