ココロの好きが溢れたら


糸が切れたように泣きじゃくる陽毬を強く抱きしめて頭を撫でる。


『もっと早く好きだって言ってやれば……』


先輩の言う通りだった。


俺がもっと早く好きだって言ってやれていたら、陽毬が今日ここまで傷付くことはなかったかもしれない。


こんなにも辛そうに泣かせる事もなかったかもしれない。


俺はずっと、好きだって言ったら、陽毬は満面な笑顔を向けてくれると思ってたんだ。


ごめん。


ごめんな、陽毬。



それからしばらく陽毬を抱きしめて宥める。

ようやく陽毬の様子が落ち着いてきた頃、陽毬が俺の胸から顔を上げて、未だに涙で溢れる瞳を俺に向けた。


「ハル…」


「ん?」


「好きっ……」



ふわっと花が咲くように笑う陽毬に、また胸がひとつ音を立てた。

引き寄せられるように、陽毬の小さな唇に自分のそれを重ね合わせる。


顔を真っ赤にして驚く陽毬の額にキスを落とすと


「や、やめて…っ、心臓止まっちゃうっ……」


なんていう可愛い抗議の声が聞こえてきた。

本当はもっとキスしてやりたいけど、仕方ない。


「分かった。じゃあまた後でな」

「うぅ……」



覚悟しとけよ?


これまでの分も、思い切り溺愛してやるから。


そう心の中で呟いて、俺はまたひとつキスを落とすのだった。


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