ココロの好きが溢れたら


ーーーーー………✧*

数日後



「ほら、陽毬」


「うっ……」



土曜の昼下がり。

私はハルと向かいあわせでソファに座っていた。


ハルは軽く両手を広げて私を呼ぶ。

なぜこんなことになっているのかというと…。


ーーー昨日の夜


『陽毬、俺に甘える練習しようか』

『あ、甘える?』

『そう。初めて会った時、陽毬は自分から俺に抱きついて来たろ』


うぅ……。

やめてっ

それは掘り返さないでっ……!!


『俺が拒絶したせいで、あれ以来陽毬は自分から俺に触ろうとしなくなった。

その原因を作った俺が言えることじゃねぇけど、これからは遠慮しないで甘えて欲しいと思ってる』



え……。



『いきなり無意識に甘えろなんてのは無理だろうから、まずは俺に触れる事からはじめようか』


そう言ってハルは意地悪そうな笑みを私に向けたんだ。


ーーー……。


そして、今に至る。


「陽毬、早く」

「ま、待って…」


確かに私は、今まで自分からハルに触れることはなかった。


ハルに嫌われたくない。

拒絶されたくない。


そんな想いが、私の心の奥にいつの間にか根付いてしまっていて。


ハルはそれを俺のせいだって言った。

でも、そんな臆病で遠慮していた私がいなければ、ハルは私と距離を縮めようとすることもなかったから、必要な事だったんだよって言ってくれた。


『だから、今度は俺が陽毬に甘える事を教える番』


そう言ってハルは笑ったの。


今はまだ、心の奥で甘える事を怖がってる自分がいる。

でも、このままじゃいけないことも分かっているから。



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