ココロの好きが溢れたら
ファミレスを出て、真緒と別れて家に帰る。
帰り道を歩いている間も、携帯のフォルダを開いて彼の写真を見ながら歩いた。
歩きスマホはダメだぞ!なんてことは分かっているけれど、今は許してほしい。
さっき真緒に言われた言葉が、自分が思っている以上に胸に刺さっていたみたいで。
彼の写真を見ないと泣いてしまいそうだったんだ。
『本当に婚約者かどうかも怪しいわ』
うっ……。
やっぱりダメだ。もっと彼を補充しよう。
今まで送られてきていた彼専用の写真フォルダを開く。
彼が生まれて間もない頃から私に送られ続けている写真。
「気持ち悪い」、「ストーカーかよ」なんて言わないでね。
私の宝物だから。
「いい?この人が将来貴方と結婚する人よ」
物心つく前から彼の写真と共に母に言われ続けた。
幼かった私は、それを素直に受け入れた。
この人が私の将来の旦那様になる人なんだ、と。
以来、会えない彼をずっと思い続けた。
それが例え幼い頃の刷り込みだったとしても、今私が恋をしているのは彼だと。