ココロの好きが溢れたら
「ご飯食べてきたのよね?お風呂入るならすぐに入っちゃって。お父さんそろそろ帰ってくるから」
「はーい」
二階へ上がって部屋に入ると、すぐに部屋着に着替える。
急いで着替えたら、そのまま携帯を掴んでベッドへダイブした。
さっき貰ったばかりの写真を開き、画面の中の彼を見つめる。
彼は胸元に某大手企業のロゴが入った青い半袖のTシャツを着ていた。
きっと練習から帰ってきたばかりなのだろうと推測する。
実は彼、最近話題のスポーツクライミングをやっていたりする。
小さい頃から始めた彼はメキメキと成長し、今や将来有望とテレビや雑誌に取り上げられるほどの注目選手となった。
もちろん録画&切り抜き済みですよ。えっへん。
この写真はきっと夕食の時に撮影したんだろうな。
彼の手元にある料理を見て、「今日はカレーだったんだ」と呟く。
カレーはハルの大好物なのに、彼の顔は険しい。
何故かって?
「ふふ……頑張れ〜」
それは彼がトマト嫌いだから。
彼がどうしてもトマトだけは食べられないのを、私は知っている。
写真はまさにサラダのトマトを食べようとしているところだった。
好きなもの。
嫌いなもの。
趣味や特技。
彼の事はこんなにも知っているのに、本人は遥か遠くにいるみたい。