一生一緒
ふと辺りを見渡せば少し先に大きな公園が見えた。






そこは中央に池がある公園で、そこまで歩いていき池の前にあるベンチに座る。






夕立はまだ続いており元々日も傾いていた為辺りは薄暗い。






ぼーーと池に落ちる雫を見つめる。






あの池に落ちる雫のように私も世界の一部に溶け込めたらいいのに……








どのくらいそこにいたのか。






足音がしてハッと我に返る。







「美幸」






…どうして……





どうして、この声を聞いて安心する私がいるんだろう……。






「………な、つめ」





ゆっくりと振り返れば全身ずぶ濡れの棗が立っていた。





元々その整いすぎる顔と隠すことの出来ない存在感があるのに、今の棗は濡れた服が体に張りつき嫌でもその鍛えられた体のラインが分かる。





なんとも言えない妖艶な姿に目が眩む人が殆どだろう。






棗はどこか安堵したような表情で近付いてきた。





私は立ちあがり彼から逃げる。






「…っ来ないで…」





その言葉に棗の足が止まった。






「……何があった」





その力強く曇りのない光を含んだ瞳が見つめてくる。





「っ……何もない」






一歩棗が近付く。





それに対して一歩後ずさる私。





「じゃぁなんで逃げる。」





また一歩近付く棗に対し一歩下がる私。






「………な、…棗たちには関係ない」







違う……そんなことが言いたい訳じゃないのに……






「何も言わねーとわかんねーぞ。」

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