一生一緒
棗の運転は驚くほど上手かった。






あっという間に目的地である水族館に着く。






初めての水族館に心が踊る。






そしてまた自然と繋がっている手。






水族館は意外と人が少なくゆっくりと見ることが出来た。






1つ1つ見ていく私に付き合ってくれる棗。




会話はないが普段から無口である二人な為、それが気まずくなることなんて全くなかった。





巨大な貝をしげしげと眺めているとたまにする意地悪な顔で棗が言う。






「食べるなよ?」






「た、食べない!…ちょっとどんな味がするか考えてただけ」






そう言うと棗が珍しく声を出して笑うではないか。






それが悔しくて私はプイッと顔を背け歩き出す。





しかし直ぐに腰に手を回されて引き寄せられる。





そしてまたゆっくりと水槽を見て回る。





私の満足した顔を見て優しい顔つきになる棗。
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