一生一緒
それが聞こえたのは偶然だった。





斎と環、敏次がふざけながら騒いでいるのを眺めながら歩いていると自然と耳に入ってきた鈍い音。





最初は気にしなかったが続けて聞こえた言葉に無意識に足が止まってしまう。







「…お前は俺たちの奴隷なんだからな!!」








ドクンと心臓が嫌な音をたてる。








冷や汗が流れ全神経が知らないうちに集中されている。






ゆっくりと音と声がした方を見れば少し離れたボロボロのアパートの1階で地面に転がっている男の子とその前に立ちはだかっている男がいた。






子供は小学校低学年くらいでその前に立ちはだかっているのは恐らくこの子供の父親だろう。






私が見ていた次の瞬間、父親らしき男が子供に向かって足を振り下ろす。






男の子は何も言わずにただ蹴られるのを耐えていた。







自然と震え出す私の体。






息が出来ない。目を反らせない。





咄嗟に胸元を握りしめるが何も変わらなかった。






「美幸?」






いち速く棗が私の異変に気付く。






しかしそんな大好きな人の声も耳に入ってこない。





伯が私の見ている先を見て血相を変えた。





「おい、無限!警察呼べ!アキラ、敏次はあの子供を保護しろ!」





そう指示を出して伯は私をまるで壊れ物を扱うかのようにそっと抱き締める。








「美幸。大丈夫だ。大丈夫。大丈夫。」







伯の大きな胸で目の前の光景が遮られる。







なんとか閉じれなかった瞳を閉じて吸えなかった酸素を取り込む。




トントンと優しく背中を擦られ自然と体から力が抜け意識が遠くなるのが分かった。
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