一生一緒
「それで美幸ちゃん。なんで君をここに呼んだかと言うと、君の事を俺達黒羽の幹部が気に入っちゃったんだ。だからこれから一緒に過ごしたいんだ。」




私は考えるまでもなく即答していた。




「無理」




「…………どうしてもかな?」




頷く。




「うーん。それは困るなー……」




「美幸ちゃん一緒に居ようよー!」




「僕も一緒がいい~!」




この二人は単純に見えて意外と賢い。




賢いと言うか人間の本心を感じやすいのだろう。




私が許している近寄れる範囲ギリギリを瞬時に理解しそれ以上を踏み込もうとせずに居てくれた。




しかしこの男は違った。




「っ!?」




反らして見えないはずの漆黒の瞳がすぐ目の前にあった。




私が私でいられる範囲を易々と越えて、あろうことか私の顎を掴み強制的に視線を合わせている。






「お前に拒否権はねぇ。俺達といろ。」






 ーー逃げても無駄だーー
 ーーお前は一生俺達の道具だーー





思い出したくない記憶が溢れ出す。





「っ……」








ーーお前も惨めだよね。こんな道具に成り下がるってーー
ーーお前は一生俺達の奴隷だーー









「っ…や……」







体が震える。呼吸が出来ない。







私は立ち上り棗から離れる。






「いや………や……っ!!」






よろよろと棗の手から逃れ後ろに下がる。





おもむろに近くにあった椅子を手に取り威力を考えずに投げつけた。





「!?」





皆が驚く中、棗だけが静かにその椅子を簡単に受け止める。




私はとにかく無心だった。




誰かが何か言っているようだったが何も聞こえない。



何も感じない。



とにかく前にいる人を、この空間にいる人を……消し去らないと……
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