一生一緒
家から北城高校までは徒歩で20分ほど。
白壁を基準に中世的な作りである高校は意外と綺麗だったが高校内を歩いていると、一部場違いなものに目が止まる。
それは駐輪場にあるおびただしい数のバイク。原付から始まり中にはハーレイなどもある。
「……」
見なかったことにして理事長室を目指すことにした。
伯からあらかじめ学園内の地図を貰っていた為、それを頼りに迷わず理事長室まで行くことができた。
コンコン
「……はい。」
ノックをしたあと返事があったためドアを開けるとそこには見知った顔が笑顔になる。
「よく頑張って来たな、美幸。」
いつもはきつく結ばれた口元が優しく広がる。
「昌廣さん。頑張ったよ」
昌廣さんこと工藤昌廣。
この北城高校の理事長で56歳の割りに若く見られるらしい。
私を見ると嬉しそうに笑顔になる。
「いつくるかずっと時計ばかりみてたぞ」
「朝もあったばかりなのに?」
「高校でしかも制服姿で会えると思うと楽しみだったんだよ。」
私は苦笑した。
この人とは赤の他人なのに本当の娘のように可愛がってくれる。
それが嬉しくもあるが胸が苦しくもなる。
「ごめんね、遅くなって。」
「いや、ここまで来れたこと自体よく頑張ったよ。美幸のクラスは2年B組で担任は伯だ。今呼ぶからな。」
そう言って昌廣は机から立ちあがり壁につけられている館内放送に手をかける。
ピンポンパンポーン
「工藤伯先生。理事長室まで来てね~」
うん。家での普段と変わらないな。
そっと思う。
少しして煩い足音と共にドアが開かれる。
「美幸!!」
「………何?」
入ってきたのは工藤伯。
今年31歳の彼もまた年齢を感じさせない若さがあり若者のように金髪に染めた髪と端正な顔立ちに世の御姉様方はストライクだろう。
「なんでそんなに冷たいのー!」
「…だって伯が煩いから」
「っひどーーー」
伯は私の頭をお返しとばかりにわしゃわしゃと撫で回す。
もーーと言いながらも頭を振ればそれだけで乱れた髪の毛は元通りに。
「…けどよくここまで来れたな。…………だいぶ時間かかってるけど」
「うん。時間かけて来たから」堂々と言ってやった。
それに苦笑して伯は昌廣を見る。昌廣も無言で頷いた。
「じゃぁ教室に行くか。」
「…………うん。」
「美幸。ここにはいつでも来ていいからな。」
「うん。」
「今日は頑張って学園まで来れた記念にケーキ買うから楽しみにしてろよ」
その昌廣の言葉に静かに頷いた。
私の味覚が殆どないことを知っている昌廣は味ではなく見た目が綺麗なものを買っては私が喜ぶことを喜ぶ。
今日のケーキもご褒美に買ってくれるのだろうが私は味わえない事に申し訳なく思いながらも伯と一緒に部屋から出た。
その後ろ姿を見つめる理事長の瞳には娘に対する不安が広がっていた。
白壁を基準に中世的な作りである高校は意外と綺麗だったが高校内を歩いていると、一部場違いなものに目が止まる。
それは駐輪場にあるおびただしい数のバイク。原付から始まり中にはハーレイなどもある。
「……」
見なかったことにして理事長室を目指すことにした。
伯からあらかじめ学園内の地図を貰っていた為、それを頼りに迷わず理事長室まで行くことができた。
コンコン
「……はい。」
ノックをしたあと返事があったためドアを開けるとそこには見知った顔が笑顔になる。
「よく頑張って来たな、美幸。」
いつもはきつく結ばれた口元が優しく広がる。
「昌廣さん。頑張ったよ」
昌廣さんこと工藤昌廣。
この北城高校の理事長で56歳の割りに若く見られるらしい。
私を見ると嬉しそうに笑顔になる。
「いつくるかずっと時計ばかりみてたぞ」
「朝もあったばかりなのに?」
「高校でしかも制服姿で会えると思うと楽しみだったんだよ。」
私は苦笑した。
この人とは赤の他人なのに本当の娘のように可愛がってくれる。
それが嬉しくもあるが胸が苦しくもなる。
「ごめんね、遅くなって。」
「いや、ここまで来れたこと自体よく頑張ったよ。美幸のクラスは2年B組で担任は伯だ。今呼ぶからな。」
そう言って昌廣は机から立ちあがり壁につけられている館内放送に手をかける。
ピンポンパンポーン
「工藤伯先生。理事長室まで来てね~」
うん。家での普段と変わらないな。
そっと思う。
少しして煩い足音と共にドアが開かれる。
「美幸!!」
「………何?」
入ってきたのは工藤伯。
今年31歳の彼もまた年齢を感じさせない若さがあり若者のように金髪に染めた髪と端正な顔立ちに世の御姉様方はストライクだろう。
「なんでそんなに冷たいのー!」
「…だって伯が煩いから」
「っひどーーー」
伯は私の頭をお返しとばかりにわしゃわしゃと撫で回す。
もーーと言いながらも頭を振ればそれだけで乱れた髪の毛は元通りに。
「…けどよくここまで来れたな。…………だいぶ時間かかってるけど」
「うん。時間かけて来たから」堂々と言ってやった。
それに苦笑して伯は昌廣を見る。昌廣も無言で頷いた。
「じゃぁ教室に行くか。」
「…………うん。」
「美幸。ここにはいつでも来ていいからな。」
「うん。」
「今日は頑張って学園まで来れた記念にケーキ買うから楽しみにしてろよ」
その昌廣の言葉に静かに頷いた。
私の味覚が殆どないことを知っている昌廣は味ではなく見た目が綺麗なものを買っては私が喜ぶことを喜ぶ。
今日のケーキもご褒美に買ってくれるのだろうが私は味わえない事に申し訳なく思いながらも伯と一緒に部屋から出た。
その後ろ姿を見つめる理事長の瞳には娘に対する不安が広がっていた。