一生一緒
今日は伯が車で学園まで送ってくれた。



「そう言えば、もう少しで夏休みだけど今年はどうしたい?」と伯



今まで何処かに行きたいなど言ったことがない。



家を出るよりも家の中で伯や昌廣さんと過ごす方が楽しい。




それだけで十分だったからだ。




「特に希望はないよ?」




「あいつらがお前を可能な限り倉庫に連れていきたいって言ってたが」




「うん。毎日は嫌だけどね。だから伯と昌廣さんがいない日に行こうかなと思ってる。」




そう言うと何か考えるようなそぶりを見せていた昌廣が私の頭の上に手を乗せた。




「じ、実はな、今年の夏休みに西日本の教職員が集まる会合があって一週間ほど北海道に行かないといけない日があるんだ。それに伯も次期理事長として同席するからその間美幸が一人になる週があるんだよ」




チラッと伯がミラーで昌廣を見た。




私はそれを聞いて動揺する。




「え、二人とも行っちゃうの?」




私が一人で数日間家で過ごすと言うのは初めてのことだった。




「大丈夫そうか?」と伯




すぐに返事は出来なかった。




「それで提案なんだがその一週間を棗たちの所で過ごしてみないか?」と昌廣




「え!?」




「あいつらと一緒だと思うと俺たちも安心するしお前も一人じゃないから淋しくないんじゃないかな?」




「だ、だけど…」




今までの私なら゛嫌゛と即答していただろう。




しかし私の頭のなかにある感情は戸惑いだけだった。




「棗たちには俺から言っとくからお前も考えといてくれ。」と軽く笑って言う伯




そこで学園に着いてしまった。




私はしょんぼりとしたまま教室に向かう。


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