一生一緒
私はこっそり別荘から出て浜辺へ降りた。



海を見てその広さに泣きそうになる。




……どうして私は……




今更ながら自分の人生を悔やむ。




いつもなら気になるはずの暑さも忘れて浜辺に座る。




過去が蘇る。本当の両親と暮らしていた小さな頃の幸せな記憶。




気付けば夕日が傾いていた。





「…部屋に戻るぞ」





棗が迎えに来たが振り返らず夕日を見続ける。




幸せだった頃の記憶が恐怖に変わるのを堪える。夕日の赤が炎の赤に変わる。




私は目を瞑ってたまに起こる幻覚をやり過ごそうとした。




「……どうした?」




頭の上に手が置かれ目を開くと漆黒の瞳と目が合う。




その瞳を見るだけで安心している自分がいた。




私はそっと息を吐いて微笑む。




「大丈夫。」




立ち上がろうとして感じる違和感。




体に熱がこもりすぎていた。





すぐに頭痛が襲ってくる。





「…っ棗……」





手を伸ばせばすぐに届くはずの棗の姿がぐにゃりと歪んで私の意識は闇に呑まれた。
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