アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
私は、少しだけいじけた。

別々のフロアだったら、別ルートで出勤もできるけれど、同じフロアに勤務していて、どうやって別々に出勤するの!?

「俺は裏口から入るよ。」

「そんな、社長なのに。」

今度は私の方が、五貴さんの手を握った。

「元々、正面玄関から入るのは、苦手なんだ。」

「そっか。」

苦手だって言う事を、無理強いしてもね。

残念。

「じゃ。また、後で。」

五貴さんは、ビルの反対側に行ってしまった。

姿が見えなくなるまで、私は手を振って見送った。


あと数分後にまた会えると言うのに。

我ながら、バカップルように思えるよ。


大きく深呼吸をして、私はビルの中に入った。

ちょうどみんなの出勤時間に重なって、エレベーターも混雑している。

ここにいる人達、私がみんなの社長の奥さんだって、誰一人知らないんだろうなぁと思ったら、急にニヤニヤが止まらなくなってしまった。
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