アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
「無くした?えっ、無くした?」

「本当に、ごめんなさい!!」

体を元に戻して、私はもう一度謝った。


でも五貴さんは何も言わずに、口をゆすいでいる。

「あの……五貴さん?」

私はゆっくりと、顔を上げた。

「えらい事をしてくれたな、つむぎ。」

「えっ……」

自分の頭から、血がサーッと引いて行くのが、分かった。

「あれは、2週間後の新作を売り出す時の企画なんだよ。次の会議じゃ、間に合わないの!」

「は、はい!」

「今から作るったって、1時間も切ってるのに、間に合うか!」

「ごめんさい、すみません、申し訳ありません!」

口元をタオルで拭いて、五貴さんは自分の椅子に座った。


「五貴……」

「話しかけんな!」

「は、はい!」

私に叫んだ五貴さんは、一枚の紙に、何かを殴り書きしていた。

きっと、さっきの資料を、思い出しながら書いているんだ。


やらかしてしまった。

もう、泣きたい。
< 239 / 255 >

この作品をシェア

pagetop