アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
「素敵だ……」

好きな人にそんな事を言われ、萎縮してしまう。

「お客様、どうですか?」

店員さんに声を掛けられ、折橋さんがハッとする。


「ああ、これにします。このまま着て行くので、このスーツを袋に入れて。」

「畏まりました。」

折橋さんに言われ、店員さんが私のスーツを持って、レジまで行ってしまった。

「よく、似合っているよ。」

私は恥ずかしさのあまり、顔を赤くして、下を向いてしまった。

「さあ、行こうか。」

伸ばされた折橋さんの手に、自分の手を重ね、エスコートされながら靴を履いた。

「こちらが、お召しになっていた物になります。」

「ありがとう。」

店員さんからスーツを受け取る時も、折橋さんは私の手を、放しはしなかった。


手を繋いだまま、私達はリムジンに乗り、そのまま車は走り続けた。

ずっと繋がれたままの、私達の手。

折橋さんは、放すタイミングを、失っただけ?
< 99 / 255 >

この作品をシェア

pagetop