私、愛しの王太子様の側室辞めたいんです!【完(シナリオ)】
第15話「どうやらお腹に僕の子供がいるみたいだね?」
〇後宮 ローズマリー 私室
ローズマリー「いつも人が身近にいるとは言え……、やっぱり監視されてるって思うと気を張ってしまうわね……」
人払いした私室。ローズマリーはボヤきながら、フォークで刺したチーズケーキの欠片を口の中に入れる。
ローズマリー「ん〜〜!おいしんぐっ?!」
ユリシーズ「落ち込んでるって聞いていたけれど、意外と元気そうだね」
不意をつくように現れたユリシーズに、ローズマリーはびっくりしてケーキを丸呑みした。
胸を叩きながら、ローズマリーはユリシーズを恨めしげに見る。
ローズマリー「ユリシーズ様……、な、何故ここに……?」
ユリシーズ「ローズマリーが落ち込んでるって聞いていたから、様子を見に来たんだよ」
ローズマリー「だ、誰から……?」
ユリシーズ「女官長から」
ローズマリー(ブラッドもだけど、私ってそんなに分かりやすいの……?!)
唖然としていると、ユリシーズが隣に座ってくる。ローズマリーの方へやや身を乗り出しながら、尋ねる。
ユリシーズ「それで、何で落ち込んでいたの?毒事件の事?」
ローズマリー「それもあるけど……」
ユリシーズ「あるけど?」
ローズマリー「えーっと……」
ローズマリーはしばし思い悩むような、言い淀むような素振りを見せた。脳裏に浮かぶのは、おどおどと震えるケイシーの姿。
〇回想(13話)
ケイシー「最近、物騒な事が続いているので……。毒に耐性があるとは言え、ユリシーズさまが大丈夫か、わたくし気がかりで……」
〇回想終了
ローズマリー(ケイシー様に心労を掛けてしまったし……)
ユリシーズは更にローズマリーにずいっと顔を寄せる。
ユリシーズ「僕に言えない事?」
ローズマリー「ちょ、近い近い!!」
ローズマリーはユリシーズから仰け反るように顔を離す。それでも少しの間考え込むようにやや視線がさ迷っていた。
ローズマリー(第5側室のマルキア様にも怪しまれてしまったし……、ユリシーズ様の耳に入るのも時間の問題よね……)
意を決したように頭を勢いよく下げた。
ローズマリー「第5側室のマルキア様に毒事件がバレてしまったかもしれないの!ケイシー様のお身体が大変な時期なのにごめんなさい!!」
ユリシーズ「……?」
数秒、沈黙が場を支配した。
ローズマリーは頭を下げたまま。ユリシーズも頭を下げたローズマリーをキョトンとした顔で見た。
ユリシーズ「……ローズマリー。ほら、顔を上げて」
しばしの間2人はそのままの体勢でいたが、最初に動いたのはユリシーズだった。
ローズマリーの頭を上げさせる。ローズマリーはアワアワと更に擁護した。
ローズマリー「ケイシー様は悪気があって私に秘密を話した訳ではなくて、なんかこう……成り行きというか、後宮にあまり味方がいないからなのよ……」
ユリシーズ「……ん?」
そんなローズマリーの様子に、ユリシーズはまたもやキョトンとした表情をした。しかし、
ユリシーズ「えっと……、取り敢えず落ち着こうか」
とローズマリーを宥めにかかる。
ユリシーズ「ほら、こっちに座って」
ユリシーズはソファーに座るように促す。大人しく従いながら、ローズマリーはそれでも慌てたように口を動かした。
ローズマリー「お願いだから、ケイシー様を責めないであげてほしいわ……!」
そんなローズマリーに構うこと無く、ユリシーズは彼女の口元にフォークに刺したチーズケーキを持っていく。
ユリシーズ「ほら、あーん」
ローズマリー「むぐ」
モグモグモグモグとしばらくローズマリーは口を動かしていたが、ハッと我に返った。
ローズマリー(物理……!)
ローズマリーが落ち着いたのを見計らって、ユリシーズは改めて口を開く。
ユリシーズ「毒事件の事がマルキア嬢に伝わってしまったんだね。その事について謝るのは理解出来る。ローズマリーがちゃんと悪いと思っているなら、そんなに責めることではないかな、とも思う」
そして、ユリシーズはクビを捻って不思議そうな顔になる。
ユリシーズ「それで、今ケイシー嬢の身体は大変な時期なのかい?ケイシー嬢が病気になった等は聞いた事がないけれど……」
ローズマリー「病気ではないわよ……。この大変さ、男の人には分からないかもしれないけれど……」
ユリシーズ「え?!ローズマリーもなるのかい?!」
ローズマリーは顎に手をあてて、考え込む。
ローズマリー「どうかしら……、私はなるかもしれないし、ならないかもしれないわ……」
ユリシーズ「なるかもしれないし、ならないかもしれない?」
ユリシーズも顎に手をあてて、同じポーズで復唱した。
ローズマリー「ええ……。こればっかりは授かりものだし……」
ユリシーズ「授かりもの……」
いまいちピンとこないのか、ローズマリーの言葉を反芻するユリシーズの反応に、ローズマリーは半眼になる。
ローズマリー(……なんだか随分と他人事みたいだわ)
目をつりあげて、今度はローズマリーがユリシーズに迫った。
ローズマリー「妊婦は大変だっていうのは有名だわ!調べたもの!ユリシーズ様もお父様になるのなら、妊婦に対する理解を深めて!」
ユリシーズ「……おとう……さま……?」
ユリシーズの目が今度こそ点になった。
〇後宮 ケイシー私室
ユリシーズとローズマリー、護衛と騎士達を連れてケイシーの私室へ向かう。
ノックもせずにケイシーの私室の扉を開けて現れたユリシーズ達にケイシーはびっくりした表情を見せる。
ローズマリーはいきなり扉を開けたユリシーズを止めかけたまま、止まっていた。手を伸ばしたが間に合わなかったのだ。
そして、ユリシーズの言葉にケイシーは真っ青になった。
ユリシーズ「どうやらお腹の中に僕の子供がいるみたいだね?」
ローズマリー「いつも人が身近にいるとは言え……、やっぱり監視されてるって思うと気を張ってしまうわね……」
人払いした私室。ローズマリーはボヤきながら、フォークで刺したチーズケーキの欠片を口の中に入れる。
ローズマリー「ん〜〜!おいしんぐっ?!」
ユリシーズ「落ち込んでるって聞いていたけれど、意外と元気そうだね」
不意をつくように現れたユリシーズに、ローズマリーはびっくりしてケーキを丸呑みした。
胸を叩きながら、ローズマリーはユリシーズを恨めしげに見る。
ローズマリー「ユリシーズ様……、な、何故ここに……?」
ユリシーズ「ローズマリーが落ち込んでるって聞いていたから、様子を見に来たんだよ」
ローズマリー「だ、誰から……?」
ユリシーズ「女官長から」
ローズマリー(ブラッドもだけど、私ってそんなに分かりやすいの……?!)
唖然としていると、ユリシーズが隣に座ってくる。ローズマリーの方へやや身を乗り出しながら、尋ねる。
ユリシーズ「それで、何で落ち込んでいたの?毒事件の事?」
ローズマリー「それもあるけど……」
ユリシーズ「あるけど?」
ローズマリー「えーっと……」
ローズマリーはしばし思い悩むような、言い淀むような素振りを見せた。脳裏に浮かぶのは、おどおどと震えるケイシーの姿。
〇回想(13話)
ケイシー「最近、物騒な事が続いているので……。毒に耐性があるとは言え、ユリシーズさまが大丈夫か、わたくし気がかりで……」
〇回想終了
ローズマリー(ケイシー様に心労を掛けてしまったし……)
ユリシーズは更にローズマリーにずいっと顔を寄せる。
ユリシーズ「僕に言えない事?」
ローズマリー「ちょ、近い近い!!」
ローズマリーはユリシーズから仰け反るように顔を離す。それでも少しの間考え込むようにやや視線がさ迷っていた。
ローズマリー(第5側室のマルキア様にも怪しまれてしまったし……、ユリシーズ様の耳に入るのも時間の問題よね……)
意を決したように頭を勢いよく下げた。
ローズマリー「第5側室のマルキア様に毒事件がバレてしまったかもしれないの!ケイシー様のお身体が大変な時期なのにごめんなさい!!」
ユリシーズ「……?」
数秒、沈黙が場を支配した。
ローズマリーは頭を下げたまま。ユリシーズも頭を下げたローズマリーをキョトンとした顔で見た。
ユリシーズ「……ローズマリー。ほら、顔を上げて」
しばしの間2人はそのままの体勢でいたが、最初に動いたのはユリシーズだった。
ローズマリーの頭を上げさせる。ローズマリーはアワアワと更に擁護した。
ローズマリー「ケイシー様は悪気があって私に秘密を話した訳ではなくて、なんかこう……成り行きというか、後宮にあまり味方がいないからなのよ……」
ユリシーズ「……ん?」
そんなローズマリーの様子に、ユリシーズはまたもやキョトンとした表情をした。しかし、
ユリシーズ「えっと……、取り敢えず落ち着こうか」
とローズマリーを宥めにかかる。
ユリシーズ「ほら、こっちに座って」
ユリシーズはソファーに座るように促す。大人しく従いながら、ローズマリーはそれでも慌てたように口を動かした。
ローズマリー「お願いだから、ケイシー様を責めないであげてほしいわ……!」
そんなローズマリーに構うこと無く、ユリシーズは彼女の口元にフォークに刺したチーズケーキを持っていく。
ユリシーズ「ほら、あーん」
ローズマリー「むぐ」
モグモグモグモグとしばらくローズマリーは口を動かしていたが、ハッと我に返った。
ローズマリー(物理……!)
ローズマリーが落ち着いたのを見計らって、ユリシーズは改めて口を開く。
ユリシーズ「毒事件の事がマルキア嬢に伝わってしまったんだね。その事について謝るのは理解出来る。ローズマリーがちゃんと悪いと思っているなら、そんなに責めることではないかな、とも思う」
そして、ユリシーズはクビを捻って不思議そうな顔になる。
ユリシーズ「それで、今ケイシー嬢の身体は大変な時期なのかい?ケイシー嬢が病気になった等は聞いた事がないけれど……」
ローズマリー「病気ではないわよ……。この大変さ、男の人には分からないかもしれないけれど……」
ユリシーズ「え?!ローズマリーもなるのかい?!」
ローズマリーは顎に手をあてて、考え込む。
ローズマリー「どうかしら……、私はなるかもしれないし、ならないかもしれないわ……」
ユリシーズ「なるかもしれないし、ならないかもしれない?」
ユリシーズも顎に手をあてて、同じポーズで復唱した。
ローズマリー「ええ……。こればっかりは授かりものだし……」
ユリシーズ「授かりもの……」
いまいちピンとこないのか、ローズマリーの言葉を反芻するユリシーズの反応に、ローズマリーは半眼になる。
ローズマリー(……なんだか随分と他人事みたいだわ)
目をつりあげて、今度はローズマリーがユリシーズに迫った。
ローズマリー「妊婦は大変だっていうのは有名だわ!調べたもの!ユリシーズ様もお父様になるのなら、妊婦に対する理解を深めて!」
ユリシーズ「……おとう……さま……?」
ユリシーズの目が今度こそ点になった。
〇後宮 ケイシー私室
ユリシーズとローズマリー、護衛と騎士達を連れてケイシーの私室へ向かう。
ノックもせずにケイシーの私室の扉を開けて現れたユリシーズ達にケイシーはびっくりした表情を見せる。
ローズマリーはいきなり扉を開けたユリシーズを止めかけたまま、止まっていた。手を伸ばしたが間に合わなかったのだ。
そして、ユリシーズの言葉にケイシーは真っ青になった。
ユリシーズ「どうやらお腹の中に僕の子供がいるみたいだね?」