私、愛しの王太子様の側室辞めたいんです!【完(シナリオ)】
第16話「閨を共にしたのは?」
〇場面 後宮 ケイシー私室
ケイシーはいきなり来たローズマリーとユリシーズに顔色を悪くして固まったまま。
そんなケイシーに対して、ユリシーズは追い詰めるように1歩近付いた。
ユリシーズ「ローズマリーに妊娠したと言ったそうだね」
ユリシーズは静かに問い詰める。
そんなユリシーズとケイシーの間に、ローズマリーは慌てて立ちはだかった。
ローズマリー「ちょ、ま、待って!違うのよ!そんなにケイシー様を責めないであげて!ほら、後宮には味方は多い方が良いわ!」
ユリシーズは目の前のローズマリーの両肩に手を置いた。
ユリシーズ「ローズマリー……。誤解をしているみたいだけれど……」
そして、ユリシーズはローズマリーを自身の方へと引き寄せた。そして、ケイシーへと向き直る。
ユリシーズ「本当は誰との子?」
ローズマリー「え……?」
ローズマリーはユリシーズの言葉を理解出来ず、抱き寄せられたままフリーズした。ケイシーは相変わらず顔を青くしたまま。
ユリシーズ「僕には全く身に覚えがないのだけれど、子供がいるのなら大問題だよね?」
ケイシー「そ、その……」
ユリシーズは険しい顔でケイシーを見る。
ユリシーズ「連れて行け」
冷たく吐き捨てたユリシーズの言葉に従って、騎士達はケイシーを取り囲む。
ユリシーズ「あとで詳しい話は彼女から聞くとして……」
そして、侍女と共に引き連れて行った。
事態についていけないローズマリーは、呆然とユリシーズを見上げた。
そんなローズマリーにユリシーズは問い掛ける。
ユリシーズ「後宮から出たいと思ったのはこのせい?」
ローズマリー「あ……」
ローズマリーは目を見開いた。そしておずおずと頷く。ユリシーズは訝しげな表情で口を開く。
ユリシーズ「僕が後宮の側室達と閨を共にしていないのは、有名な話だけれど……」
ローズマリー「えっ、だって――」
(回想1)
〇ユリシーズ後宮 ローズマリー私室 朝
ブランケットを被って、ローズマリーはベッドの上で丸まっていた。
そのローズマリーにそっとカリスタは近付く。やや言いづらそうに口を開いた。
カリスタ「ローズマリー様……。昨日後宮に入られたケイシー様ですが……、その、昨夜……」
ローズマリーはブランケットの中から声を出した。
ローズマリー「言わなくていいわ」
カリスタはその先を言わずに黙り込んだ。気遣わしげにローズマリーが包まったブランケットを見下ろす。
ローズマリー「もうこれで6度目だもの……、仕方ないわよ慣習なのだから」
そして、ローズマリーは静かにカリスタに言った。
ローズマリー「それ以上言わなくていいわ。今日はまだ眠いから、もう少しだけ寝るわ」
後ろ髪を引かれるようにカリスタが退出した後の部屋。ローズマリーはブランケットの中で目元を真っ赤にしながら、ゆっくりと目を閉じた。
ローズマリー(側室が入る度、みんな私に凄く気を遣って、わざと話題に触れないようにする。聞きたくないけれど、それでも気になる――傷付くって分かっているのに、あの時も)
(回想2)
〇ユリシーズ後宮 中庭 昼
リリアンとローズマリーがガゼボに向かい合って座っていた。リリアンはゆっくりと紅茶を飲んでいるのと対照的に、ローズマリーはちょっと落ち着かないような、ソワソワしながらリリアンをちら、と見た。
ローズマリー「あ、あの、リリアン様……」
リリアン「どうしましたか?」
ローズマリーの声に、リリアンは聖女のような微笑みを浮かべて小首を傾げる。
ローズマリー「あの……その、」
ローズマリーは非常に言いにくそうに言葉を詰まらせる。リリアンはそんなローズマリーを急かすことなく、ゆっくりと待っていた。
ローズマリー「その、リリアン様はね、〝閨の儀〟……どうだったんですか……?」
リリアン「まあ……」
リリアンは口に手を当てる。そして、やや顔を赤らめて口元の手を頬に移動させた。
リリアン「あまりそんな事を聞いてはいけませんわ……。本来は言いふらす事ではないですもの……」
ローズマリー「ごめんなさい……。でも、」
リリアンはふふっ、と微笑んだ。
リリアン「ええ。ローズマリー様の気になるお気持ちも分かりますわ」
ローズマリー「リリアン様……」
リリアン「そうですね……。幸せだった、とだけ」
血の気が引く。ローズマリーはそれでも無理矢理微笑んだ。
ローズマリー「そ、そうなんですね!」
リリアン「ええ、まあでも私はユリシーズ様に愛されている訳では無いですもの……」
ローズマリー「え……」
リリアンはにっこりと優しげな微笑みを見せる。
リリアン「だって、これは〝慣習〟なんですから」
ローズマリーはティーカップが持てなかった。指が微かに震えていた。
ローズマリー(そっか。〝慣習〟、なんだから、ユリシーズ様はリリアン様だけじゃない。他の人とも――)
(回想終了)
ローズマリー「1人も?!」
驚いいた声を上げるローズマリー。ユリシーズは爽やかに微笑んだ。
ユリシーズ「そうだよ?大体、側室達もその親族達もみんなちゃんと『お話』すると受け入れてくれるんだよね」
『お話』の部分に若干力がこもっていたのは気のせいではないだろう。
ローズマリー(とても言いくるめてそうだわ……!)
ローズマリー「で、でも……」
ローズマリーは食い下がる。今まで複数人から聞いていたのは何だったのか。
ローズマリー「〝閨の儀〟は慣習だから行われている、って……」
ユリシーズ「聞いたの?」
ユリシーズの問いにローズマリーはコクリと頷いた。
ユリシーズは不思議そうにローズマリーの様子を見ていたが、チラリ、とカリスタの方を見たのを見逃さなかった。
ユリシーズ「なるほど」
とユリシーズはボソリと呟いた。そして、カリスタの方を向いて、目を細める。
ユリシーズ「どうやら、大きな矛盾があるようだね」
ケイシーはいきなり来たローズマリーとユリシーズに顔色を悪くして固まったまま。
そんなケイシーに対して、ユリシーズは追い詰めるように1歩近付いた。
ユリシーズ「ローズマリーに妊娠したと言ったそうだね」
ユリシーズは静かに問い詰める。
そんなユリシーズとケイシーの間に、ローズマリーは慌てて立ちはだかった。
ローズマリー「ちょ、ま、待って!違うのよ!そんなにケイシー様を責めないであげて!ほら、後宮には味方は多い方が良いわ!」
ユリシーズは目の前のローズマリーの両肩に手を置いた。
ユリシーズ「ローズマリー……。誤解をしているみたいだけれど……」
そして、ユリシーズはローズマリーを自身の方へと引き寄せた。そして、ケイシーへと向き直る。
ユリシーズ「本当は誰との子?」
ローズマリー「え……?」
ローズマリーはユリシーズの言葉を理解出来ず、抱き寄せられたままフリーズした。ケイシーは相変わらず顔を青くしたまま。
ユリシーズ「僕には全く身に覚えがないのだけれど、子供がいるのなら大問題だよね?」
ケイシー「そ、その……」
ユリシーズは険しい顔でケイシーを見る。
ユリシーズ「連れて行け」
冷たく吐き捨てたユリシーズの言葉に従って、騎士達はケイシーを取り囲む。
ユリシーズ「あとで詳しい話は彼女から聞くとして……」
そして、侍女と共に引き連れて行った。
事態についていけないローズマリーは、呆然とユリシーズを見上げた。
そんなローズマリーにユリシーズは問い掛ける。
ユリシーズ「後宮から出たいと思ったのはこのせい?」
ローズマリー「あ……」
ローズマリーは目を見開いた。そしておずおずと頷く。ユリシーズは訝しげな表情で口を開く。
ユリシーズ「僕が後宮の側室達と閨を共にしていないのは、有名な話だけれど……」
ローズマリー「えっ、だって――」
(回想1)
〇ユリシーズ後宮 ローズマリー私室 朝
ブランケットを被って、ローズマリーはベッドの上で丸まっていた。
そのローズマリーにそっとカリスタは近付く。やや言いづらそうに口を開いた。
カリスタ「ローズマリー様……。昨日後宮に入られたケイシー様ですが……、その、昨夜……」
ローズマリーはブランケットの中から声を出した。
ローズマリー「言わなくていいわ」
カリスタはその先を言わずに黙り込んだ。気遣わしげにローズマリーが包まったブランケットを見下ろす。
ローズマリー「もうこれで6度目だもの……、仕方ないわよ慣習なのだから」
そして、ローズマリーは静かにカリスタに言った。
ローズマリー「それ以上言わなくていいわ。今日はまだ眠いから、もう少しだけ寝るわ」
後ろ髪を引かれるようにカリスタが退出した後の部屋。ローズマリーはブランケットの中で目元を真っ赤にしながら、ゆっくりと目を閉じた。
ローズマリー(側室が入る度、みんな私に凄く気を遣って、わざと話題に触れないようにする。聞きたくないけれど、それでも気になる――傷付くって分かっているのに、あの時も)
(回想2)
〇ユリシーズ後宮 中庭 昼
リリアンとローズマリーがガゼボに向かい合って座っていた。リリアンはゆっくりと紅茶を飲んでいるのと対照的に、ローズマリーはちょっと落ち着かないような、ソワソワしながらリリアンをちら、と見た。
ローズマリー「あ、あの、リリアン様……」
リリアン「どうしましたか?」
ローズマリーの声に、リリアンは聖女のような微笑みを浮かべて小首を傾げる。
ローズマリー「あの……その、」
ローズマリーは非常に言いにくそうに言葉を詰まらせる。リリアンはそんなローズマリーを急かすことなく、ゆっくりと待っていた。
ローズマリー「その、リリアン様はね、〝閨の儀〟……どうだったんですか……?」
リリアン「まあ……」
リリアンは口に手を当てる。そして、やや顔を赤らめて口元の手を頬に移動させた。
リリアン「あまりそんな事を聞いてはいけませんわ……。本来は言いふらす事ではないですもの……」
ローズマリー「ごめんなさい……。でも、」
リリアンはふふっ、と微笑んだ。
リリアン「ええ。ローズマリー様の気になるお気持ちも分かりますわ」
ローズマリー「リリアン様……」
リリアン「そうですね……。幸せだった、とだけ」
血の気が引く。ローズマリーはそれでも無理矢理微笑んだ。
ローズマリー「そ、そうなんですね!」
リリアン「ええ、まあでも私はユリシーズ様に愛されている訳では無いですもの……」
ローズマリー「え……」
リリアンはにっこりと優しげな微笑みを見せる。
リリアン「だって、これは〝慣習〟なんですから」
ローズマリーはティーカップが持てなかった。指が微かに震えていた。
ローズマリー(そっか。〝慣習〟、なんだから、ユリシーズ様はリリアン様だけじゃない。他の人とも――)
(回想終了)
ローズマリー「1人も?!」
驚いいた声を上げるローズマリー。ユリシーズは爽やかに微笑んだ。
ユリシーズ「そうだよ?大体、側室達もその親族達もみんなちゃんと『お話』すると受け入れてくれるんだよね」
『お話』の部分に若干力がこもっていたのは気のせいではないだろう。
ローズマリー(とても言いくるめてそうだわ……!)
ローズマリー「で、でも……」
ローズマリーは食い下がる。今まで複数人から聞いていたのは何だったのか。
ローズマリー「〝閨の儀〟は慣習だから行われている、って……」
ユリシーズ「聞いたの?」
ユリシーズの問いにローズマリーはコクリと頷いた。
ユリシーズは不思議そうにローズマリーの様子を見ていたが、チラリ、とカリスタの方を見たのを見逃さなかった。
ユリシーズ「なるほど」
とユリシーズはボソリと呟いた。そして、カリスタの方を向いて、目を細める。
ユリシーズ「どうやら、大きな矛盾があるようだね」