君にベレー帽は似合わない
***

メグちゃんにメッセージを送ってから、少し経つけど返事がこない。

もしかして、怒ってるのかな?
うわぁ、どうしよう……
嫌われちゃったかもしれない。

メグちゃん、ほんっとにごめんね!!

スマホを握りしめてメグちゃんに念を送っていると、営業の丸山くんが話しかけてきた。

「ハルさん、何されてるんですか?」
「はぁ!? 誰のせいだと思ってんの!? 君のせいで、ボクは大好きなメグちゃんとデートできなくなったんだけど! メグちゃんからは返事こないし…全部丸山くんのせいだから!!」
「…オ、オレのせい?」
「丸山くんが急に呼び出すなんてことしなければよかったの!!」

ボクは自分のブランドをもっている。

丸山くんは高校の後輩で、ボクのブランドの営業さん。
彼の力は会社内でも認められていて、すごい人なんだけど……たまに人を呼び出すから困る。
ボクだって暇じゃないんだ!って何回も言ってるのに、聞いてくれない。

そろそろ本気で喝を入れないとダメかな。

「そういえば…これ、石川さんからハルさんにって」
「なんだろう……あ! 新作! わぁ〜! 可愛い!」

大きなリボンのついたカンカン帽。
今からの季節にぴったり!

「これで全部チャラにしてあげる。石川さんにちゃんとお礼を言うこと! わかった?」
「え、あ、はい…」
「どう? 似合う?」
「……女装したら似合うんじゃないですか?」
「そこは嘘でも似合いますって言って! ボクだってわかってるよ。今は男の格好だから似合わないって」

でも、あの子ならぜっっったいに似合うってことも、知ってる。

「…ハルさん、にやけてますよ?」
「うるさい。ボク、これからデートだからそろそろ行くね」
「突然お呼び出しして申し訳…」
「あー、もうそういうのはいいって。いつものことでしょ。でも次はないから」
「はーい」

絶対反省してないな、コイツ……

時計をみると12時30分をまわっていた。

や、やばい!

駅へと走り、なんとか電車に間に合った。

メグちゃん、もう少しだけ待っててね。
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