ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
『ふむ。では、もう一つのスープを食べようか』

できるかぎりの力を込めた。手抜きは、いっさいしていない。渾身の、パイ包みスープを堪能してもらいたい。

工夫した点を、メルヴに読んでもらう。

『エーット、スベテノ“オイシイ”ヲ、スープニ詰メコミマシタ。ゴ賞味アレ!』

『ふむ。なるほどな』

メルヴが蓋を開く。パイがこんがりと焼けたスープが出てきた。

『おお、パイで蓋をしているスープか。珍しいな』

くんくんと匂いをかいだあと、肉球でパイ生地を崩す。

『ホロホロと崩れる。中のスープは……む、具がないな』

そのままでは食べにくいので、メルヴがスプーンに掬って食べさせてくれるようだ。

まずは、スープだけを掬う。

『むうっ!?』

リュカオンの目が、カッと見開いた。

『濃い! なんだ、この濃さは! 世界の天と地が交ざり合った、至福の一杯であるぞ!』

どういうことなのかと、ハルピュイア公爵家陣営は不思議そうな顔をしている。

 
スープには大空を舞うホロホロ鳥のガラと、豊かな大地で育ったウサギ肉や野菜の旨味が濃縮している。だから、あのような表現をしたのだろう。
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