ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
「アステリアは、アストライヤー家の者なのに、よく下々の者達の生活を把握していたな」

「それは、私の前世がドのつく庶民だったからよ」

「その話、本当だったのだな」

「信じていなかったの?」

「話半分程度に聞いていた」

なんだと!? と返しそうになったが、自分の立場に置き換えてみる。もしも、イクシオン殿下が、「前世はアラカン独身王子だった」なんて言っても、「ふーん」としか思わないだろう。大事なのは、生まれ変わったあとどう生きるか、なのかもしれない。

「イクシオン殿下はたくさんの人達の生活を豊かにするために、魔道具を作っているのでしょう? 開発費はいくらだってかけてもいいから、低い費用で作れる物を考えないと」

「それもそうだな」

「それが難しいのであれば、魔道具を売る層を変えるとか」

「富裕層に売るのか?」

「ええ、そうよ。それか、外国向けに販売するの。国庫が潤ったら、国民の生活も豊かになるはず」

「ああ、なるほど。そういう考えもあるのか」

落ち込んでいる様子だったが、だんだんと元気を取り戻す。単純で本当によかった。

「あの、アステリア。新しい着想を思いついたら、作る前に相談してもいいか?」

「ええ、もちろん」

「ありがとう」

イクシオン殿下は私の手を握り、安心したように微笑んだ。

信頼しきったような笑顔に、胸が高鳴ってしまう。

イケメンの素朴な笑顔は、耐性がない者にとって破壊力が抜群だ。なんでも許してしまいそうになるので、雰囲気に流されないよう注意をしなければならないだろう。
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