ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
もくもく湯気があがる鍋を、リュカオンは嬉しそうに覗き込む。

『おお、これが、“まんじゅう”か!』

蒸したてアツアツのまんじゅうを、手袋で掴んで二つに割った。

『中も白いのだな!』

リュカオンにまんじゅうの中身を見せていたら、イクシオン殿下がやってきた。

「できたのか?」

「できましたが」

「なぜ、敬語を使う?」

私の顔色を窺うイクシオン殿下は、雨の日に散歩に行けるか視線で問いかけてくる犬のようだった。

あまりにも下手な態度なので、笑いそうになったがぐっと堪える。

ゴホンと咳払いし、敬語を使う理由を説明した。

「今から国王夫妻に拝謁するので、失礼がないように練習しているのですが」

「すまなかった。私が無茶を受けてきたものだから、怒っているのだろう?」

「まあ、そうね」

自動調理器のおかげでなんとかなったけれど、なかったら絶望していただろう。

「今度、頼まれたときは、まず、アステリアに相談するから」

「そうしてくれると、助かるわ」

正直しばらく許さんと思っていたが、素直に謝ってきたので、許してあげることにした。
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