桜色の恋。
ー1年後ー

川沿いの道を歩いていると、風に桜の花びらが乗って、私を包み込んだ。

「立川。」

私は後ろから聞こえた声に振り返る。

「あら、氷見くん。この道来るのめずらしいね。」

氷見くんとは相変わらず、学校で話すことはほとんどない。
ただ、時々この道で話すだけだ。
だけど、私以外の女子と私情で話すところを見たことがない。

…それは、少しだけなら期待してもいいのかな。

「…なんか、桜に呼ばれた気がして。」
「それは私か花か、どちらの桜かな?」
「花に決まってるだろ。」
「うん、私呼んでないもん。…私も、桜に呼ばれた気がしたんだ。何か、惹きつけられるようにきちゃって。」
「一緒だ。やっぱ、立川と感性合うな。」

私たちはしばらく黙って桜を見上げていた。
ふわふわととめどなく地面に舞う桜。
キリッとした氷見くんの横顔。
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