人生の待ち時間
「十時十三分……そろそろ行くか」
ジリジリしながら何度もスマホで時間を確認した。ここでようやく、自分にゴーサインを出した。
玄関先で「行ってきます!」と声を張り上げてから、自宅を出た。
自宅から待ち合わせ場所の体育館の駐車場まで、車で五分もかからない。そのぐらいの距離だったら、都会の人は歩くのかもしれない。が、悲しいかな田舎者は、ちょっとした移動もついつい足代わりとなっている自分の車に乗ってしまう。
待ち合わせ場所の駐車場に着けば、いつもの場所にシルバーのセダンが止まっていた。すぐ隣に愛車を止めて車を降りた。
「遅くなって、ごめん!」
ロックが解除されるのを待って助手席に乗り込むと、両手を顔の前で合わせてギュッと目を閉じて謝った。
「うん、大丈夫!スマホ見てたから」
目を開けて、運転席に座るタカくんを見れば、いつもの穏やかな微笑みを浮かべていた。
心の中で小さく舌打ちをし「本当にごめん!」と、私は苦笑いを浮かべながらもう一度謝った。
「アイは、靴が見たいんだよな?どこに行く?」
「うん!仕事用のパンプスがそろそろ限界ぽくって。そうだな。とりあえず、いつものショッピングモールに行ってくれる?」
「了解」
タカくんは目的地に向かって、滑らかに車を発進させた。