人生の待ち時間


「不安だったら、私かこの人の傍にいればいいから」

そう言って紹介されたのが、タカくんだった。

タカくんの事は、一応知っていた。目立つ人だったから。

一八三センチの長身に、整った容姿。性格も穏やかで優しいとくれば、モテない訳がない。

実際その時の飲み会にも、タカくん目当てで参加している女子社員も何人かいたように見えた。

「よろしくお願いします」

そんな人の傍に、私なんかがいてもいいのかな?戸惑いながらも、穏やかな笑みを浮かべるタカくんにとりあえず頭を下げた。

戸惑っていたのは、最初の三十分くらいだった。話上手でのせ上手の営業のオジサマたちに、代わる代わる声をかけられて相手をし、気が付けば作り笑いじゃなく自然に笑っていた。

それは私だけでなく他部署から参加した女子社員、みんながそんな感じで。タカくんが女子に囲まれたのも、最初のわずかな時間だけだった。

たくさん話して笑って、ちょっと疲れたかもと感じた頃、私の隣にタカくんが座った。

「アイちゃん、お疲れ様!」

「お疲れ様です」

この飲み会の間に、私はみんなに「アイちゃん」と呼ばれるようになっていた。なぜだか私が違和感を感じたのは一瞬で、すぐにそれを受け入れていた。

「総務の仕事、ちょっとは慣れた?」

「どうなんでしょう?まだ、指示された仕事をこなすので精一杯です」


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