人生の待ち時間
私は、肩を竦めて答えた。
「一ヶ月であまり出来すぎても、先輩としてはやりづらいよ」
「そんなもんですか?」
「そんなもんよ」
「じゃあ、そういう事にしておきます」
真面目な顔をして頷いた私に、タカくんは穏やかに微笑んだ。
タカくんとは、本当に他愛ない事を話した。ここのお店の唐揚げがおいしかったとか、おもしろかったテレビ番組の事とか。
そういうちょっとした事が、タカくんとよく合うような気がした。好きな味付けとか、おもしろいと思う芸人さんとか。
ただ、それだけの事だ。ほんの些細な事。
そうしているうちに、いつしか肩に入っていた力が抜けていた。
タカくんと一緒にいる時間、私はとても楽に過ごせた。タカくんの穏やかな空気は、人見知りな私をまるごと包んでくれたようだった。
それからも、営業部関係の飲み会にはたびたび参加した。それをきっかけに、人見知りな私にも他部署に知り合いが何人かできた。
「ねっ、飲み会に参加して、よかったでしょ?」
「はいはい!マリコ様のおかげです。ありがとうございます!」
こうやってマリコは、ニヤニヤしながらたびたび私をからかってくる。
飲み会に初参加の時の私の不安そうな顔が、マリコにとって結構ツボだったらしい。