極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 予約するときにわざわざ、「夫婦です」なんて言わないよね。

 ってことは、私たち、自然に夫婦に見えたってことかな。

 どぎまぎしながら軍手をはめ、何も聞こえなかったふりで準備にいそしむ。

「俺の見せ場を取るなよ。お、うまそう」

 クマおじさんが行ってしまったあと、裕ちゃんが食材の箱を開ける。

 中には、生肉、野菜、エビ、ソーセージやベーコンなどなど、ぎっしりと詰まっている。

「……ねえこれ、多くない? 多いよね?」

「うん。食材セットは四人前からじゃないと注文できなかったから。自分たちで食材を買って運ぶと、時間がかかってしまうし」

 さらっと言う裕ちゃん。

「じゃあこれ、四人前ってこと!?」

 どう見ても大人ふたりしかいないのに、やけに多いと思った。

「大丈夫。羅良は無理でも、希樹なら食べられるよ」

 何故か自信満々で言う裕ちゃんにムッとする。

「どういう意味?」

「陸上やってたとき、ずっと食べてただろ」

「それは、当時の消費カロリーが半端なかったからだよ!」

 とにかく、焼こう。焼いたらかさが減って見える。ような気がする。

「私も頑張るから、裕ちゃんも頑張って食べてよ」

「もちろん」

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