極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
 他のグループのテントやコンロは、見えないようになっている。

 大自然の中、完全に二人きりで肉を焼く。

 最初は少人数のバーベキューに不安しかなかったけど、焼いたお肉を食べたら一気にテンションが上がった。

「美味しい! なにこれ、どんな高級食材? 裕ちゃんも食べて!」

「ん」

 何を思ったか、裕ちゃんは私に向かって口を開ける。

 まるで、鳥のヒナだ。食べさせてってこと? 

「ちょっと待って」

 焼けた肉を直接口に放り込むのはダメだよね。

 網からとった肉に、フーフーと息を吹きかけた。

「はい、どうぞ」

 周りが見ていないからできることだな。

 恥ずかしながらも肉を差し出すと、裕ちゃんはそれを口に含む。

「うん、フーフーのおかげで倍美味しいな」

「何言ってるの。あー、もっと食べよ。もっと!」

 恥を忘れるため、テーブルとコンロの前を忙しなく往復する。

 開放的な空間と、森から放出されるマイナスイオン。自然の風に吹かれると、いつもより食べ物がおいしく感じられた。

「マシュマロまである~! フウ~!」

 いつの間にかメインの食材を食べきり、ちゃっかりデザートまでいただいてしまった。



ちょっと休憩したあと、私たちは森の中を散策していた。


「夜はシェフが作るフルコースだけど、よかったかな」

「えっ、シェフが作ってくれるの?」

「そう。だから俺たちは何もしなくていいんだけど、希樹は夜もバーベキューしたかった?」

「いや……もう四人前は食べきれないかも」

 まんまるくなったお腹をさすると、裕ちゃんはぷっと吹き出した。

< 102 / 210 >

この作品をシェア

pagetop