極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「俺も。バーベキューはつい食べ過ぎるよな」

「わかりみが深い……」

 子供の頃、バーベキューで食べ過ぎ、結局吐いた思い出がよみがえる。

 数分歩くと、川が見えてきた。

「綺麗な川。真夏だったら絶対入っちゃうな」

 さらさらと流れる川辺に座り、指先で水を触る。

 夏でも冷たいのであろうその水は、幼い頃のことを思い出させた。

「何家族か集まってキャンプに行ったことあったよね。裕ちゃんと健ちゃんと、うちの姉妹で川に入って」

「そんなことあったっけか」

「あったんだよ。で、翌日羅良だけ、見事に熱を出したの」

 言ったあと、慌てて口を押えた。

 しまった。羅良のことを話題に出すんじゃなかった。

 おそるおそる、隣に座る裕ちゃんの横顔を見る。

 彼は傷ついた風でもなく、穏やかに川の流れを眺めていた。

「……騒がしいな」

 ふと、裕ちゃんが視線を移す。

 そっちの方から、若者グループのはしゃぐような声が聞こえてきた。

「あっちは普通のキャンプ場にもなっているみたいだから、家族連れや大学生がいても不思議じゃないな」

「うん」

 せっかく騒がしい都会から逃れてきたのに。やっぱりどこでもバカ騒ぎする人っているのね。子供は仕方ないけどさ。

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