極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 ちょっともやっとしたけど、すぐに思いなおす。

 私も若い頃はああだったわね……なんて、急におばさんになったみたい。

「あ、なにあれ」

 声のする方から、何かが流れてきた。
 毒々しい紫とグリーンで着色された、大きな水鉄砲だ。子供が持ったら、バズーカくらいに見えるだろう。

 こんな綺麗な川に、変な落とし物してっちゃダメだ。プラスチックは分解されないんだから。

 私は急いで靴を脱ぎ、裾を捲りあげ、裸足で川の中に入る。

「おい、希樹」

「大丈夫!」

 岩に引っかかった水鉄砲を拾い上げると、川上の方から若者が走ってきた。

「すみませーん、ありがとうございまー……あ」

 オーバーサイズのTシャツに、細いパンツ。

 大学生みたいな格好をして近づいてきたのは、なんと健ちゃんだった。

「お前……まさか、ストーカーか」

 鬼のような顔でにらむ裕ちゃん。

「まさか。友達と遊びに来てただけだよ。高校の時の同級生と……ほら、希樹ちゃん、手」

 川から大股で戻る私に、手を差し伸べる健ちゃん。

 その前に、裕ちゃんが立ちはだかる。

「名前を間違えるな」

 裕ちゃんが伸ばした大きな手を取る。しっかりと掴まれ、岸に引っ張り上げられた。

「はい、健ちゃん。川にゴミを流したらダメだよ」

「わかってるって」

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