極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
健ちゃんは弱った顔をして、水鉄砲を受け取った。
もうだいぶ涼しくなってきたというのに、水鉄砲で遊ぶとは。若いなあ。って言っても、いくつも変わらないけど。
健ちゃんが首にかけていたタオルを貸してくれたので、それで足をふいた。
靴下を履きなおしている間に、健ちゃんが裕ちゃんに話しかける。
「兄貴たち、どのテントなの。あ、もしやあっちの、バカ高い方じゃない?」
「お前には、絶対に教えん」
裕ちゃんは私が靴をちゃんと履いたのを確認すると、荒々しく手を引き、来た道を引き返す。
「そんなに邪険にしなくても……」
情けない声に振り返ると、健ちゃんが寂しそうな顔をしていた。
その後ろから、友達らしき女子がふたり、駆け寄ってくる。
「健太郎、誰あれ?」
「スタイルよすぎじゃない? 顔見せてよ~!」
女の子たちの高い声が聞こえたけど、裕ちゃんは振り向きもしないでズンズン歩く。
私を健ちゃんから遠ざけるためだっていうのは、わかる。
「裕ちゃん……」
でも、兄弟が仲良くできないのは、悲しい。
「ねえ裕ちゃん、私、もう大丈夫だよ」
若者たちの声が完全に聞こえなくなったところで、裕ちゃんは足を止めた。