極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「毎日家に来られるのは困るけど、たまに会うくらいなら……」
言っている途中で、どんどん怖い顔になる裕ちゃん。
言葉を失った私に、彼はぼそりと呟いた。
「お前のためだけじゃない。俺があいつにお前を会わせたくない。自分の女になれなれしくしてほしくない。それだけだ」
自分の女って……。
それって、もしかしてやきもち?
「それじゃ……」
それじゃ、裕ちゃんがまるで私に恋をしているみたいだ。
言いかけて、口をつぐんだ。
そんなわけない。なれなれしくされた結果、私の正体が明るみに出ることを恐れているんだろう。
私たちの間を、冷たい風が吹き抜ける。
「ちょっと寒くなってきたね」
パーカーを羽織った腕をさすると、裕ちゃんは眉間の皺をやわらげた。
「そうだ、近くに温泉があるんだ。グランピング宿泊客は無料で利用できる」
「えっ、温泉。行きたい!」
「よし、早めに行こう。そのあとで夕食だ」
裕ちゃんが微笑み、私はホッと息を吐く。
せっかくこんなところまで来たんだ。
普段のゴタゴタは忘れて、楽しまなきゃ。
私たちは、手を繋いでテントに戻る。
足場の悪い道を歩く私を、裕ちゃんが支えて導いてくれる。
それだけで、とても幸せな気分だった。