極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
中華とパンケーキ
目を覚ました私は、スマホを見て跳び起きた。
「裕ちゃん!」
リビングに急ぐけれど、そこにはもう誰もいない。
「しまったー……」
完全に寝坊してしまった。
キャンプから帰ってきたのは、昨日。日曜の夕方、ちょうど国民的アニメの主題歌がテレビから流れだす時間だった。
土曜の夜、星を見てからいい加減寒くなってテントに戻ると、なんとベッドはひとつしかなかった。
あれ、そうだっけ。なんか、可愛い家具に浮かれていて、ダブルベッドなのを見逃してた。
私たちは顔を見合わせた。
『……布団で寝たいよな』
『んーでも、私こっちでいいよ! 大黒柱に風邪をひかせるわけにはいかないもの』
ベッドの横に、申し訳程度に寝袋が置かれている。
私はそれを指さしたけど、裕ちゃんは首を横に振った。
『夫婦でそれはおかしいだろ』
出た。偽装結婚で、他に誰も見ていないのに無駄に夫婦のふりを強要してくるやつ。
『で、でも……』
『心配しなくても、いつも通り。希樹が了承してくれないなら、何もしないよ』
裕ちゃんはベッドに腰かけ、隣のスペースをぽんぽんと叩く。
何もしないのは夫婦としておかしくないんでしょうか……。