極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
数日後。
雑誌に載っているような、ザ・OL通勤服に着替えた私は、意気込んで玄関に立った。
「さあ、行くか」
「はいっ」
裕ちゃんの車に乗り込み、いざ出勤じゃ。
本来なら同伴出勤は周りに嫌な感じを与えると思うので、別々に行きたいところだ。
だけど、初めは色々とわからないことが多いので、裕ちゃんの言うことを聞き、一緒に行くことに。
「帰りは電車って、本気か?」
ハンドルを握ったまま、裕ちゃんの眉間に皺が寄る。
スーツの裕ちゃんはやっぱり素敵だ。二割増しで、ときめく。
「それ以外、どうしたら?」
「タクシーを呼べばいい。あるいは、専門の運転手、雇うか?」
一瞬冗談かと思ったけど、裕ちゃんは本気らしい。にこりともしない。
「パートに行くのに運転手って、聞いたことがないよ」
「それを言うなら、副社長の妻がパートに出る方が珍しいだろ」
「そうかなあ」
どうやら裕ちゃんは、やっぱり私が働くことをよく思ってはいないみたい。
「あんまり甘えてるって思われたくないから、送迎はいいよ」
うちの実家は、羅良には過保護だったけど、私には全然だった。
どこへ行くにも、電車やバスを使ったものだ。
私も運転手に乗せていってもらうより、その方が楽しかった。
「ふうん。まあ、無理はするなよ」
納得しきっていない表情で、裕ちゃんは言った。
目的地に近づくたび、緊張感が高まっていく。
新たな職場に行くというだけで緊張するのに、羅良のふりをしなくてはならないことが、プレッシャーになっていた。