極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
裕ちゃんが副社長を務める企業のビルを見上げ、私は嘆息した。
父の会社もビルを持っているけど、こんなに大きくはない。
「すごいねえ……裕ちゃんの一族って、これと同じようなビルを何棟も持っているんだよね」
「世界的は、もっとすごい一族たくさんいるから。さあ、行くぞ」
さすがセレブ。賞賛され慣れてる。否定も肯定もしない。
ビルに入ると、さすが副社長。行く先々で会った社員に挨拶とお辞儀をされる。
その人たちの前を通りすぎたあと、後頭部に刺さるような視線を感じた。
きっと、あの女は誰だろうと思われているのだろう。
居心地の悪さを感じつつ、裕ちゃんと一緒に最上階の重役フロアへ。
エレベーターから降りた私は、まず副社長室に連れていかれた。
部屋の中には応接セットと、重厚さを感じる黒いデスク。それくらいしかなく、小ざっぱりとしている。
裕ちゃんが椅子に座るのと同時くらいに、入口のドアがノックされた。
「どうぞ」
重いドアを開けて現れたのは、メガネをかけた中年女性だった。
「おはようございます、副社長」
「おはよう。こちら、秘書室長の長瀬さん。長瀬さん、妻の羅良です」