極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
長瀬さんのメガネが、きらりと光る。鋭い目線の美女だ。
「星野羅良です。よろしくお願いいたします」
お辞儀をして顔を上げる。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
落ち着いた声音で、長瀬さんはこちらに会釈を返した。
「では、あとは任せます。雑用係ですから、どう使ってもらうのも長瀬さんの自由です」
「かしこまりました。では星野さん、こちらへ」
裕ちゃんに会釈をし、私たちは副社長室の外へ出た。
「星野さん、秘書の経験は?」
ドアの外で、長瀬さんがにこりともせずに問う。
「あ、ありません」
「前職は何を?」
「一般事務です。電話応対とか、パソコンを使って入力や計算……」
答えている途中で、長瀬さんは胸の前に手のひらを出した。
もう結構、という意味だろうか。
「こちらが副社長秘書室です」
副社長室のすぐ隣に、秘書室はある。
長瀬さんがドアを開けると、かすかに芳香剤のいい香りがした。まさに女の園って感じ。
汗にまみれてきた私の人生からは、考えられないほど爽やか。
部屋の中では、三人の女性がそれぞれのデスクに座って仕事をしているようだった。