極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「みなさん、おはようございます。今日から秘書室のサポートをしていただきます、星野さんです」
雑用を補助と言い換えるあたり、さすが人の上に立つ女性だわ。
感心してクールな長瀬さんを見ると、顎で「挨拶しなさい」と示唆された。
「あ、星野羅良です。秘書の経験はありませんが、体力には自信があります。よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げ、挨拶する。
「よろしくお願いいたします」
行儀のいい声が重なって聞こえた。
今日からこの礼儀正しい人たちの中に、自分が入るんだ。
新世界に来たようなワクワクした気分で顔を上げる。けれど。
三人の若い秘書たちは、私と目も合わせず、冷静な顔でパソコンを見ていた。
「もう勤務時間は始まっていますので。星野さん、こちらへ」
秘書デスクからちょっと離れた窓際に、ちょこんと小さなデスクと椅子、ノートパソコンが置かれていた。
「こちらが星野さんのデスクです」
私はちょっとした違和感を覚える。
自分のデスクだけ、明らかにスペックの低そうなパソコン。もの書きをするスペースはあまりない。そして電話もない。