極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「えっと、まず何をしたらいいでしょう」
長瀬さんに問うと、彼女は眉ひとつ動かさず、冷たく返す。
「逆に、何ならできそうですか?」
私は言葉を失う。
この秘書室で私ができること……ない。
手とり足とり教えてもらえるとは思っていなかったけど、考えてみれば自発的にできることはほとんどない。
「えと……掃除、とか……ゴミ出し、とか……」
小学生みたいな返事しかできない自分が、恥ずかしい。
長瀬さんは相変わらず無感情で、淡々と言う。
「……シュレッダーにかけてほしい書類があるのですが、それをお願いしても? 私たちが溜めてしまったもので、申し訳ないのですが」
「は、はいっ! もちろん!」
言っている間に、電話がじゃんじゃんかかってくる。
きっと忙しくて、書類整理まで人手が回っていないのだろう。
長瀬さんに導かれ、壁際の棚へ。ずらりと並ぶ分厚いファイルを長瀬さんは指さす。
「保存期間は全て表紙に表記してありますので、期間を過ぎているものは破棄してください」
「はいっ。これ、全部ですね」
父の会社では業者に頼んでいたけど、副社長が扱う書類となると、自分のところで処理するのが安全だろう。