極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「ええ。もし、わからないものが出てきたら、必ず破棄する前に声をかけてください」

「わかりましたっ」

 棚の横に置いてあったシュレッダーを自分の椅子の近くに持っていき、数冊ファイルを抱え、早速作業を始めた。

 シュレッダーが大きな音を立てる。

 容赦なく、秘書デスクの電話が鳴る。

 邪魔にならないよう、慌てて電源を切る。

 それを数回繰り返したとき、長瀬さんが立ち上がった。

「星野さん、少々狭いですが、隣にミーティングルームがあります。そちらの方が作業がはかどるかと」

 つまり、ここでやられたら邪魔だってことだ。私は素直にうなずき、シュレッダーとファイルを抱えて隣の部屋に移った。

「しっずかー……」

 ドンと床に重いシュレッダーを置き、作業再開。

 順調に飲み込まれていく紙を見ていたら、虚しくなってきた。

 いやこれも、誰かがやらなきゃならない大事な仕事だよ。うん。

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