極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「すみません」
言い訳はせず、彼女は謝罪した。
とってどうするの。
何もできない、何も知らないくせに、でしゃばるな。満足な応対もできないくせに。
そう言われた気がした。
いや、気のせいじゃない。
長瀬さんは、そう言いたかったに違いない。
「こちらこそ、思わず手が伸びてしまって。すみませんでした」
頭を下げると、その場の空気を取りなすように別の秘書が言った。
「あ、室長、もう十二時です」
「もうそんな時間。じゃあ星野さん、先に休憩にお入りください」
何もしていない、一番疲れていない私が最初に休憩だなんて。
そう思ったけど、いたたまれない雰囲気に耐えられず、うなずいた。
「ありがとうございます。お先にいただきます」
私はうつむいたまま、秘書室をあとにした。