極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 もしやここ、隠れた名店なのかも。

 店の中は激混み、とはいかないまでも、さすがお昼時、それなりに繁盛しているようだ。

「裕ちゃん、こういうとこ来るんだ」

 案内された小さなテーブルでこそっと言うと、「まあね」と裕ちゃんはほくそ笑む。

「外に出られるときは、できるだけ出たいんだ」

「気分転換に?」

「そう」

 裕ちゃんは店員さんを呼び、刻んだ角煮が入ったチャーハンと、鶏の塩蒸しを注文。私は海老ワンタンメンにした。

「それだけで足りるか?」

「うん」

 普段はどれだけでも時間があるけど、勤務中は時間通りに戻らないといけないプレッシャーがすごい。

 私の場合、多少遅れても何も言われないだろうけど……。

 そう、何が辛いって、秘書課のみんなに敬遠されているのが手に取るようにわかってしまったのが辛い。

 副社長の妻でも、ゆるく受け入れてもらえるんじゃないかというのは、まったく甘い幻想だった。

 秘書経験もない私は、あそこで邪魔者か腫れものか、いずれかでしかない。

「うん、うまい。ほら、鶏も食べてみろ」

 料理が運ばれてきて、裕ちゃんは見ていて気持ちのいい食べっぷりを披露。

 一方私は、なかなか箸が進まない。

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