極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 会社に帰り、秘書課のドアを開けた瞬間、私の悪口が聞こえてきた。

 なんてことはなく、周りはいつもの通りだった。

 午後三時で仕事を終え、一分たりとも遅れずに秘書課を出る。

「はあ~……」

 やっぱり辞めた方がいいのかなあ。

 これじゃ、働くメリットがひとつもないよね。

 会社を出て、地下鉄に乗り、家に帰る。

 今日の夕食は、週末買いだめした食料でなんとかできるから……。

 色々考えつつ、駅から家に向かってぼんやり歩いていたら、前方から来たサラリーマン風の男性にぶつかった。

「あ、すいま……」

 相手だってスマホを見ていたけど、ぼんやりしていたので反射的に謝ってしまった。

「チッ、どこ見てんだよ」

 同年代の男性は、こちらを怖い顔でにらむ。

 にらまれる筋合いはない。お互い様じゃないか。

 カッとした私は、相手をにらみ返していた。

「あなたこそ、スマホ見て歩いていたじゃない」

「はあ? お前みたいなバカ女みたいに暇じゃねーんだよ。仕事中なんだよ、これで」

 仕事の連絡でスマホを使うのはわかる。先を急いでいたのもわかる。

 だけど、歩きながらはダメだろ! 私が老人だったら転んで骨折ってるよ!

 さらに言い返そうとしたら、私の後ろからすっと人影が飛び出した。

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