極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
ゆで過ぎたブロッコリーが、彼の箸につままれ、ぐずりと崩れた。裕ちゃんは別に嫌な顔もせず、器用に箸にそれを乗せ、咀嚼する。
「あっちでは仕事を忘れて、リフレッシュしような」
夕食を食べ終えた裕ちゃんは、立ち上がって私の頭をなでる。
食器を運んでいく広い背中を見ていると、複雑な気持ちになった。
裕ちゃんは私がぼんやりしている原因を、仕事のストレスとでも思っているのだろう。
彼は優しい。
だけど、どうしてこんなに優しいの?
全然焦ったり、イライラしたり、不安がったりする様子がないなんて、おかしいよ。仙人でもあるまいし。
まるで、羅良が帰ってこなくても構わないみたい。
いったい何を考えているのか、まったくわからない……。
悶々としながらお風呂に入ったら、またボーっとしてしまった。
すっかりのぼせて出てきたら、脱衣所で転んだ。
「何してるんだよ!」
物音に気づいて駆けつけた裕ちゃんに怒られる。
体を隠す余裕もない私はバスタオルをかけられ、裕ちゃんにお姫様抱っこされた。
ああ、こんなに軽々と筋肉質な私を抱き上げるなんて……。
次に気がついたとき、私は自分の部屋の緊急用ベッドの上にいた。