極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
朝起きたら裕ちゃんはすっかりいつもの顔に戻っていた。
野生の獣を思わせるような昨夜の目を思い出すと、冷静ではいられなくなる。
ますます彼が何を考えているのか、わからなくなっている。
とにかく全てを忘れたふりをして、「おはよう」と挨拶をし、朝食をとり、仕事へ。
覚悟を決め、秘書課の扉を開ける。
もう、空回るのはやめた。受け入れてもらえないのなら、それでいい。
やってと言われたことだけ忠実にやることにしたら、少し楽になった。
今までは少し、肩ひじを張りすぎてきたのかもしれない。
キャリアアップするにはこれじゃダメだろうけど、どうせ偽名でやっている仕事だ。先はない。
開き直り、余分なことはしないようにした。
暇な時間はデスクに座り、パソコンを開き、ゆっくりと入力するだけの仕事をする。
脇に置いたスマホの画面を、チラチラとチェックする。健ちゃんから連絡がくるかもしれないからだ。
しかし土日を挟んで3日間、なんの連絡も入ってこなかった。
「やっぱり、そんなに早く進展があるわけないよね……」
出勤したら、トイレにまでスマホを携帯していく。
手を洗って秘書課に戻ろうとしたところ、突然ポケットの中のスマホが震えた。