極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「お待たせ」

 紅茶を注文すると、健ちゃんはすぐに話しはじめた。

「まず、当日の足取りから。羅良ちゃんは自宅から出てから、公共交通機関を使った形跡がない。けど、近所の防犯カメラから、バイクの後ろに乗っている羅良ちゃんらしき人が見つかった」

「バイク?」

「彼女の失踪には協力者がいたってことだ。家を出る時間を決めておいて、自宅のカメラに映らない場所で合流したんだ」

「協力者って……」

 運ばれてきた紅茶に口をつける気にもならなかった。

 身を乗り出すと、健ちゃんが脇に置いていたバッグから、写真を取り出す。

 私は息を飲み、そのまま吐き出せなくなった。

 そこには羅良と寄り添い、親し気に歩く男性の姿が。

「これ……」

「駆け落ち、ってことかな。意外や意外、目黒区にアパートを借りて住んでいるみたい」

 くらくらとめまいがした。

 まさか、あの真面目な羅良が浮気をして、その相手と駆け落ちしているだなんて。

「どうして……もっと遠くに行かなかったのかな」

 まさかの都内。実家からも裕ちゃんのマンションからも、それほど遠くない。

「公共交通機関を使うと、足が付きやすくなる。田舎に引っ越すと目立つ。そういう理由じゃないかって、探偵が言ってた」

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