極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
紅茶の水面に浮かんでいる、泣きそうな顔の自分から目を離し、健ちゃんを見返す。
「多分、誰かが調査を妨害していたんだ」
「え?」
「今回手に入れた防犯カメラの映像は、実は個人の車についていたドラレコの映像だったんだ。偶然、バイクがちょっと近所の軽自動車に当たっちゃったんだよ。衝撃で映像を残す機能が付いているドラレコは、ぎりぎり走り去る羅良ちゃんらしき人の姿をとらえていた」
「ドラレコ……」
ドライブレコーダーに録画されちゃうなんて、羅良も計算していなかったんだろう。
「それ以外の普通の防犯カメラはさ、どれだけ協力をお願いしても、誰も見せてくれなかったんだって。変じゃない?」
「誰かが、見せないように圧力をかけていた」
「あるいは、お金をばらまいた」
いったい誰が。
考えると、そんなことをする理由があるひとはひとりしか浮かばない。
「羅良が自分で、手配しておいたんじゃない?」
健ちゃんはうなずいた。
「そうだろう。でも、なにか引っかかる」
「なにが?」
「なんだろう。うまく言えないけど……。とにかく、兄貴への報告は頼むよ。俺が言ったって、聞いちゃくれないだろうから」
そこで話は打ち切られてしまった。
私は手帳をぎゅっと持ち、見つめた。
「すべては羅良に会えば、明らかにできるよ」
健ちゃんは「そうだね」と相槌を打ち、コーヒーを飲み干した。