極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
お店を出て、もう一度健ちゃんにお礼を言う。
「ありがとう、健ちゃん。私、早速羅良に会いにいってみる」
「えっ、兄貴に言うのが先じゃない?」
「ううん。二人で話したいの」
タクシーをつかまえようと、道路に向かって手を上げる。
「俺も一緒に行こうか?」
私はフルフルと首を横に振った。
「私たちだけの方がいい」
誰も挟まず、ふたりで話がしたい。
説得すれば、帰って来てくれるかもしれない。
淡い期待を抱き、目の前に停車したタクシーに乗り込む。
「気をつけてね。何かあったら連絡して」
ドアが閉まる前、健ちゃんが大声で言った。
「ありがとう」
言い終わるか終わらないかで、ドアは自動で閉まった。
運転手に住所を告げると、タクシーは静かに発車した。
メーターが距離を刻んでいく。
知らない景色の中を眺めていると、胸と胃が痛くなってきた。
私、緊張してる。姉に会いにいくだけなのに。
ギュッとにぎって膝の上に置いていた手の平が、じっとりと汗ばんでいる。