極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「そういうことになるよね」

「ひどい。じゃあどうして、裕ちゃんと婚約破棄しなかったの。結婚式前日に出ていくなんて、ありえなくない?」

 まくしたてる私に、羅良は聞いたこともないような大声で反論した。

「できなかったのよ!」

 私は言葉を封じられてしまう。

 羅良は激しい感情を宿した瞳で、こちらを見つめた。

「そんなことしたら、どれだけの人間を裏切ることになるだろうって、ずっと悩んでいたの」

 裕ちゃんと羅良の婚約が破棄されたら、父の仕事に少なからず影響が出る。

「それはわかるけど。ちゃんと事情を話せば……」

「他の人を好きになってしまったから、裕ちゃんとは結婚できませんって?」

 また黙ってしまう。

 たしかにそんな理由で、周囲が納得するわけはない。

「話し合いで解決できるなら、とっくにしてる。でもできないから、姿を消すしかなかった」

「そんな……」

 両親や裕ちゃんと話しても、何もよくならない。何も元通りにならない。

 羅良は元通りになることを、まったく望んでいないのだから。

< 151 / 210 >

この作品をシェア

pagetop