極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「そういうことになるよね」
「ひどい。じゃあどうして、裕ちゃんと婚約破棄しなかったの。結婚式前日に出ていくなんて、ありえなくない?」
まくしたてる私に、羅良は聞いたこともないような大声で反論した。
「できなかったのよ!」
私は言葉を封じられてしまう。
羅良は激しい感情を宿した瞳で、こちらを見つめた。
「そんなことしたら、どれだけの人間を裏切ることになるだろうって、ずっと悩んでいたの」
裕ちゃんと羅良の婚約が破棄されたら、父の仕事に少なからず影響が出る。
「それはわかるけど。ちゃんと事情を話せば……」
「他の人を好きになってしまったから、裕ちゃんとは結婚できませんって?」
また黙ってしまう。
たしかにそんな理由で、周囲が納得するわけはない。
「話し合いで解決できるなら、とっくにしてる。でもできないから、姿を消すしかなかった」
「そんな……」
両親や裕ちゃんと話しても、何もよくならない。何も元通りにならない。
羅良は元通りになることを、まったく望んでいないのだから。