極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「希樹はいま、裕ちゃんと暮らしていて、どう?」
突然質問をされて、ハッと顔を上げた。
「どうって……いきなりだから、大変で」
「家事、苦手だもんね」
「それに羅良と違って、彼氏でもないひとと一緒に、夫婦のふりをして暮らすっていうのは……」
「意外と楽しいでしょ?」
あごに手をあててのぞきこんでくる羅良。
「そんなことないよ! 色々あって、めっちゃ大変で」
「あのね。楽しければ楽しいって、言ってもいいんだよ。私に気兼ねすることはない。私は実は、裕ちゃんのこと、なんとも思ってないから」
それは前にも聞いた気がするけど。じっと見返すと、彼女は信じられないことを言った。
「今は、じゃない。生まれたときから一度も、彼に恋をしていたことはなかったの」
「……はぁ……!?」
私と対照的に、羅良は落ち着き払った声で言う。
「そして裕ちゃんも、私のことを女としては見ていなかった」
「ちょ、ちょっと待って」
その先を聞いてはいけないような気がした。
けれど羅良は、容赦なく話し続ける。
「裕ちゃんだって、ずっと、別に好きな人がいたの」
ぐわあああんと、頭の中でお坊さんが思いっきり鐘をついたような音がした。そんな気がした。